(※注意:本稿では高電圧を扱う回路を木片で作成しておりますが、万一同様の取り組みをなされるときは感電、火災にご注意ください。特に木片の絶縁性能は湿度などの環境で大きく変化する可能性があるため、ご注意ください。)
■動機
最近、 Xを通じてエフェクターやアンプを作っている方々と繋がりを持てたことで、製作のモチベーションも上がったし、先輩から指導や情報共有いただけることで学習曲線が大幅に上向いてきたように感じます。
その中で気になっていたのが、真空管ギターアンプを主に作っている方々が皆Push-Pullを主に作られていること。何か理由があるはずなので、それを探るべくPush-Pullアンプを作ってみることに決定。
■構成の検討
Leo Fenderを勝手に尊敬しているので、やはり最初はLeoさんの回路を参考にしたい。Reverbを作るときによく見ていたし、Fender系でいいアンプとしてよく名前を聞くのでDeluxe Reverb(デラリバ)を元ネタにすることに決定。
ただし、デラリバはリバーブあり、トレモロあり、というデラックスでゴージャスな構成なので、習作でいきなり全部作るのは荷が重い。また、固定バイアスで負電源C -35Vがいるのもちょっと面倒。
まず、リバーブは前に作ったし、トレモロは個人的にあまり必要性を感じないのでオミットする。デラックスじゃなくなる。
バイアスについては、同じく古典回路で出力段が自己バイアスなVOX AC30にも元ネタになっていただく。AC30はグリッド抵抗をそのまま接地する代わりに、4球のKを50Ωで接地している。これは楽でいいです。
■球の検討
Leoさんに倣いつつ手持ちですぐ使える球として、12AX7を選定。最初はムラード位相反転にも12AX7を使おうとしていたが、よく考えたら手持ちに12AT7があったのでそちらに変更。
出力管は、12AQ5と12BY7Aで迷いつつ、MT9ピンで揃えたら綺麗だなと思ったのと、今回は電源トランスを使うので12AQ5では6.3V1層で点火できないので、12BY7Aを使うことに決定。
■回路図
構成、球が決まったので、回路図に落とし込む。
■実体配線図
今回は、手早く金属加工せずに実験したいので、合板と真鍮釘、金属板を少々使って元祖ブレッドボードで作ります。
■実装
今回、実装が一番面白いのではと思います。色々と工夫を凝らして、安くて手堅く、金属加工レスで実装しています。
VRと真空管ソケットはホームセンターの安いL字金具を活用。1個数十円。特に真空管ソケット部分は、合板の側面にネジ止めし、黒く塗った割りばしに鋼線で縛りつけています。ある程度の強度はあるのに、楽に加工できます。
また、元祖ブレッドボードでは、ネジと圧着端子があれば基板のどこでも端子台になります。これがまた便利です。
ちなみに、真鍮釘は垂直にペンチを構えて圧入するのが一番オススメです。叩くより静かでミスしにくいです。圧入できないような堅い木はブレッドボードには向かないでまず木を替えましょう。
完成形です。NFBはこの後付けました。
トランスはゼネラルトランスさんのPMF-8P-10Kを利用。PPトランスの中ではかなりお買い得。
■試験
NFBも実装し、音出し試験完了。感想としては、「太い、広がりがある」。出力段の信号経路にケミコンが無い故か、低域からしっかり音が出て、朗々とした印象を受けます。
歪み方も、ファズのように毛羽だってじゅわじゅわする感じで、同じ球を使った12AX7-12BY7A Champとは別物に感じます。
今度はスタジオでしっかり鳴らして、もっと違いを深堀したいと思います。
■測定(途中、後編に続く?)
一通り音を楽しんだので、最後に要所を実測。Blogを書くうちに眠たくなってきたので、値のみメモします。
BY7 Erp=218V Ek=3V Ik=30mA Ig2=3mA Eg2=155V
AX7マラード Erp=135V Ep=78.7V,69.6V Ek=29.2V Ik=1.4mA
AX7後 Erp=124V Ep=72.6V Ek=0.67V Ip=0.52mA
AX7前 Erp=124V Ep=81V Ek=0.65V Ip=0.44mA
ちなみに、Erpはプレート負荷抵抗の電源側の対GND電圧です。(Erp - Ep)÷Rp=Ipです。
細かい分析と次のアクション案はまた今度。
以上。