3部作の中編です。
真空管式Spring Reverb Driverを1590A手乗りサイズで作る①(自作タンクの挫折編)
真空管式Spring Reverb Driverを1590A手乗りサイズで作る②(タンクの手配、回路検討、球とOpt転がし編)
真空管式Spring Reverb Driverを1590A手乗りサイズで作る③(実装編)
①では、リバーブタンクから自作しようとして撃沈するところまでをお伝えしました。
②は、Accutronicsのちゃんとしたタンクを使って、回路図を練って完成させるところまでを記録します。
回路図と実体配線図はこちら。ただし、実体配線図は生煮えで、空中配線だらけで大変なのでオススメしません。回路図はあるお方のご指導もあり、わりといいものに仕上がっていると思います。
音はXのポストをご参照ください。
■Accutornicsリバーブタンクの手配
オークションを探しているとジャンクながら綺麗そうなものを見つけたので試しに落札。
調べてみると、OUT側の緑の配線が外れているだけで、これを直したら呆気なく直りました。
その後、昔100均で買ったステレオ⇔RCAのコードが断線しかかっていたなど別のトラブルはありました。
■回路の前検討
林先生の回路解説、FenderのDelux Reverb等の定番回路、Schematic HeavenにあるDan ElectroやPremierの古典回路を参考に、どんな回路にするか考えます。
・設計ポイント
自分として外せないのか以下のポイント。
- なるべくコンパクト、できればHammond 1590Aの手乗りサイズに仕上げる
- 球はMT管2球まで
- Optは東栄T-600
- なるべく流通量の多く新品も手に入る、高価でない球を使う
- 12A*7シリーズや6BM8など
色々考えた末に、Dano 9100 Spring Reverbをベースに、Fenderのエッセンスを入れた回路にすることに。
Dano 9100は球の数が少なく、比較的シンプル。Fenderの回路は、球の数が多いものの、林先生をはじめとし、音の良さが証明されている点が心強い。
・参考回路:9100と考察
以下、9100を清書した図。初段は12AX7に書き換えています。
6C4はMT7では定番の電力増幅3極管のようです。μ 17, rp 7.7kと、12AU7の片側みたいな球です。というか、6C4をベースに12AU7が生まれたようですね。
9100を参考にするにあたり注意が必要なのは、回路には書かれていないがリバーブユニットの入力インピーダンスが非常に高そうなところ。
3極管で直接ドライブしているようなので。
また、最終段はタンクの出力をカソードフォロワで出しているが、手持ちのタンクだと十分な電圧になるかも心配。
そして、特にDRYの信号は高抵抗を通ってそのまま外に出ていくので、Zが高すぎないかも心配。
ロー出しハイ受けというようなオーディオ回路の常識が固まる前の、大らかな時代だったのでしょうか?
ここは、手元のタンクがIN 8Ωなので、Optを噛ますことにする。
東栄T-600を動かすためには、よく使っている12AQ5にするか、それともFenderの作例にならって12AT7をパラレルで使うか、出力管としてもよくつかわれる12AU7を使うか、がやりやすそう。
ここは、一度全パターン作って鳴らしてみることに。
初段は、増幅度を稼ぎたいので12AX7にする。定数も、5F1よりも高いゲインになるようにRpを大きめにする予定。
・DRYの高抵抗は?
林先生のサイトでも言及されているが、9100やFender方式だと、DRYは1MΩ以上の高抵抗を直列で通ってMIX回路に行く。
しかも、Reverb信号の正帰還にもなっているので、単純に考えるとお行儀のよくない回路と言える。
Premier M-90なんかは、初段でDRYをカソード側から取り出して、信号が混ざらないようにしている。お行儀がいい。
果たしてどっちがいいんでしょうか?
■回路の検証
ここまでを踏まえて、3パターンを考えてみた。
初段とMIXは9100を踏襲し、12AU7を使う回路のみ、3極管が1ユニット余るので②のようにドライブを補強するか、③④にようにカソードフォロワの入れ方を変えて考えてみる。
(回路方式や定数の選定にあたり、Xで関わらせていただいたある方にご指導いただいたお陰で一気に完成度が高まりました。パターン①の修正部分などに名残があります。この場をお借りしてお礼申し上げます。)
パターン①:12AQ5ドライブ
パターン③:12AU7ドライブ、DRYをカソードフォロアで分離
パターン④:12AU7ドライブ、最終段をカソードフォロワでZ変換(最終稿)
■ブレッドボードで試験
試験回路を組んで、回路形式をとっかえひっかえして試してみる。
・3極管か5極管か?1ユニットか2ユニットか?
まず①は普通にリバーブとして使える音にはなった。
続いて、本命の②以降を試してみる。
②は、聴覚上①とほぼ変わらない。②がOKだった時点で12AQ5は入手性が悪いので①は取りやめ。
5極管ならではの音になると期待していたが、タンクを鳴らすうえでは差が小さいようだ。
さらに、思い立って12AU7から12AT7にしてみると、こちらのほうが断然ギターっぽい。
12AU7は音がオーディオっぽくなってノれない。
ついで、②のパターンで12AT7の1ユニットを試しに止めてみるが、こちらも問題無し。
林先生のページにもタンクを鳴らすには1W以下で十分とあったし、大げさな電力増幅管はいらないようだ。
・どこにカソードフォロワを使うか?
ここまでの実験から、本命は③か④に絞られた。9100に比べて1ユニットまだ余力があるので、これの使いようで新しい取り組みができる。
ある意味一番面白い③をまず試してみたが、すっきりしすぎていて面白くない。
あの正帰還や、DRYが高抵抗を通る部分に意味があるっぽい。
天才Leo Fenderが作って、長年愛されてきた回路ですから、素人の付け焼刃では太刀打ちできないですね。
最後に、④を試してみる。これがなかなかびっくりの結果でした。
スピーカーを鳴らすのに手乗り5F1を使っていますが、どうやら元の9100の回路のままだとZが高すぎるようで、カソードフォロア無しだと広域がごっそり抜け落ちていました。
最終段のカソードフォロアありだと、広域まですっきり聞こえてモダンな音色になります。
これはなかなか意味ありでした。
■玉転がし
手元にはJJの12AX7、東芝の12AX7, 12AU7、NECの12AT7があります。
5F1も含め、これを適当に組み替えて一番いい組み合わせを探りました。
1番影響が大きいのは、5F1のプリで、ここはJJじゃないとダメでした。
残りはタンクのドライバーに12AT7がよい、というくらい。
次に球を買う機会があれば、JJの12AT7も試してみたいですね。
■トランス(Opt)転がし
手元に、T-600 7kとオリエントコアT-600 7k, 12kがあります。
完成形の④をベースに、Opt自体やタップの組み合わせを変えて聴覚チェックしてみました。
単純に考えると24k:8Ωでオリエントコアを使うのが一番よさそうでしたが、変にすっきりしすぎて面白味がなくなってしまいました。
オリエントコアは、オーディオ用と考えたほうがよさそうです。
結局、14k:8Ω相当として使うよりも7k:8Ωで鳴らすほうがよかったです。
いつも通りの結線に落ちつきました。
ここまで回路も固まったので、あとは最後の実装編です。