2024年10月21日月曜日

2073 BTLで簡易ギターアンプを作る

エフェクターを繋ぐため、386スモーキーアンプよりもクリーンで癖のないパワーアンプが欲しくなった。時間をかけず、手頃なIC一発で組むことに。

大したものではないが、完成した回路は以下の通り。


特に参考にしたのが可燃ごみ箱氏のギターアンプ。実質、先人の回路から前段のディストーションとトーン回路を除いただけなのだが、定数と部品だけは自分の手と耳を使って選び直した。

■パワーアンプ部分

ネットで参考になりそうな事例を漁っていると、NJM2073の回路がいくつか見つかった。NJMのものはディスコンで秋月でも手に入らないが、M2073というセカンドソースは今でも入手可能のよう。こちらはLM386/NJM386によく似たパワーアンプICだが、ゲイン調整ができない代わりに2回路入りというもの。

2回路あるので、それぞれから逆位相の信号を出すようにし、スピーカーを挟むBTLというつなぎ方もできるらしい。出力用のカップリングコンデンサが不要になるのと、理論上は倍の電流でスピーカーを駆動し大きな音を取り出せることがメリットのよう。

■入力インピーダンスのケア

2073は386系と違って入力抵抗が100kΩと高く使いやすいが、ギターのピックアップやウクレレのピエゾを繋ぐにはまだまだ低インピーダンス。試しにブレッドボードでBTLアンプを組み、7ピンの入力に直接ウクレレのピエゾ出力を繋いでみたが、やはりローがすっぱり消えてしまってキンキン音にしかならない。なので、2SK30Aのソースフォロワを前段に据える。

ソースフォロワ部分は、バイアスをかけず、コンデンサも入れず、入力抵抗も無しにした。試しに1MΩの入力抵抗をつけたが、それでも音痩せしてしまう。ピエゾを受けるには数十MΩが必要なのだろう。入力抵抗無しでも特にノイズが乗ったり等は無かったので、電気回路としてあるべきかはわからないがひとまず無しにした。バイアスとカップリングコンデンサもお作法としては入れるべきなのだろうが、手持ちの楽器を繋ぐ分には特に音割れすることも無かったので割愛した。

本来はソースに固定の抵抗を繋ぎ、コンデンサで交流だけを取り出してから可変抵抗で分圧する。可変抵抗を直接ソースに繋ぐと、ボリュームを絞るほどRCのバランスがハイパスフィルター寄りになり、ローが通らなくなるが、聴覚上問題なかったのでこの構成にしている。

■コンデンサの定数およびの検討

検討といっても、オームの法則とハイパスフィルタ・ローパスフィルタの基本原則くらいしか知らないし、安いテスターしか持っていないので、理論や計測ではなく現物を耳で聞いて自己満で判断しているだけ。

5ピン8ピンの間の104は、データシートだと10uFになっている。これをタンタル10uFにすると、低音も高音もしっかり出るようになった。ケミコン10uFだとローは同じくらいだが、高域が少し濁った感じになる。104だと、程よくローカットされてすっきりする。オーディオアンプとしてはタンタルが1番な感じだが、楽器として使う場合は好みでよいと思う。

5ピンに繋いだ103はデータシート通りだが、これもセラミックにするかフィルムにするか、定数を下げるか等がチューニングのポイントになる。

最後に、スピーカと並列の抵抗+コンデンサがあるが、こちらは発振防止のためのよう。元は1Ω+0.22uFだが、音痩せしすぎるので10Ω+104にしている。

■試運転と雑感

回路図通りにブレッドボードで組んでVOX MINI3のスピーカに直結し、ウクレレとギターで鳴らしてみたが、本当に素直な音がする。足し引きが無いという感じ。

VOX MINI3は音を変えて軽く遊ぶ分には面白いけど、ノイズが多いし弄り回した音になってしまう。エフェクターを繋いでもキャラクターがわかりづらい。対して、2073アンプならエフェクターの個性がよくわかる。

ワンコイン以下で、ウクレレの練習用+ギターのエフェクター試験用アンプという目的達成できたので非常に満足。

2024年10月3日木曜日

ZO-3ギターを、ハム⇔シングルで切り替えられるようにする

ハムバッカー4芯化で学習した内容を実践してみる。

スイッチ増設するか迷った末、安さと実装の楽さからピンヘッダ方式に決定。どうせライブで使うわけではないので結果十分だった。

最初は、4芯化して2回路3ポジションのスイッチでシングル⇔ハム⇔パラレルシングルの切替をできるようにしようと考えていたが、できるだけボディを加工したくないし、まずはシングルの音が使えればいいと割り切った。

この場合、2つのコイルを結んだ部分とGNDを短絡するかどうかを切り替えるだけでよい。

原理は以下の図に示す通り。
A-~B+の結線を、B-が繋がっているGNDに図右側のオレンジの線で短絡させると、Bのコイルの信号はすべてGNDに吸われるので、Aの信号だけが出る"シングルコイル"として使えるようになるというわけ。

今回はピックアプの端っこにピンヘッダをくっ付けて、シングルにしたいときだけヘッダを短絡させる作りにした。

元々はこんな状態。


シングル化の効果は聞き分け・弾き分けできるくらい顕著。
パワーが落ちる分ボリュームを上げる等対応は必要だけど、1台で出せるキャラクターの幅が大きく広がって楽しい。

ボディの加工に比べると数段楽で、気軽に試せる範囲と思う。



Mini Watter 6DJ8を作る

http://www.op316.com/tubes/mw/mw-6dj8pp-2017.htmの6DJ8全段差動PPミニワッター2017を作った。

■回路

回路、ラグの配置は原典をほぼ踏襲。
ラグは配置の問題から10+10の2枚に分けて、30V ZDの部分だけを片ラグに置き換える。
また、MT9ピンソケット周りも片ラグを排して空中配線する。
原典より小さい100x50x200mm程度のシャーシを使ったので、クリアランスがかなり厳しかったので、もう少し大きいシャーシがオススメ。
電源と無線系はシャーシの側面に配置し、電源トランスやアウトプットトランスの上にも基盤を配置するなど結構無理やり詰め込んでいる。

■費用

トランスが非常にお高く、電源用とOPT2つで3万近くなり、今回の構築費用の7割程度を占める。
真空管はヤフオクで旧ソ産2本2,300円のものをゲット。

■写真など

まずは電源を作ってテスト。


余っていたアルミシャーシを加工。
穴はステップドリルで一発だが、ニブラで綺麗に直線を切り出すのが難しい。

トランスの結線と配線の色を確認。右上にうっすら見えているのはメインの回路を組んだラグ板。

粗く配置を検討。

位置が決まったら、どんどん実装していく。

だいぶそれらしくなってきた。

あともう一息。








ここまで配線すればパワーアンプとしては完成。このときはAC100Vの配線直結だったが、あとでメガネコネクタ化してヒューズも追加した。
最後に、M5stamp+PCM5102Aで作ったBluetooth+I2Sユニットを組み込んで、スマホやPCから無線で直接ならせるようにしたら完成。

前に作ったトランジスタのTourer Part 5といい具合に収まっている。筐体は小さいが、トランスがあるので持ち上げると結構重い。

暗がりだとヒーターの灯りが映える。
せっかく旧ソ連の球なので、旧ソ連の音楽が聴きたくなる。

夜な夜な作業して、電源回路を組んでからパワーアンプとして動くまでだいたい7日、さらにBluetoothを組み込むのに4日くらいかかった。
慣れた人が集中してやれば土日で作れるかもしれない。
BOM(部品一覧)をちゃんと作って、1回の秋葉原詣でや通販で部品を仕入れ切るのがポイントかも。

音を出してみた感想は、さすがという感じ。
最初はヒーターの配線がイマイチでハムノイズがあったが、経路の見直しを行ったら非常にしずかで聞きやすくなった。

2024年10月2日水曜日

ハムバッカーの4芯化

 エレキギターのハムバッカーを4芯化するための有益なリンク集。

https://pop-guitars.com/brog/?p=1252

https://pop-guitars.com/brog/?p=1247

https://www.soundhouse.co.jp/howto/guitar/wiring/sp/?srsltid=AfmBOop_2Lm9k61L8ytj1UVowcQcHN600Hiecq-8HFg7dg5Eg0Ds4Lx

https://frontisland.com/reference-book/coil-tap/

①②はポップギターズ、③はサウンドハウス、⑤はフロントアイランド。

①は、どうやって4芯化するか?

②は、4芯化した後コイル同士をどうやって繋ぐとどんなピックアップとして使えるかの概要。

③は4芯の話とは離れるが、一般的なギターでどんな結線をしているか?

④は4芯ハムバッカーとスイッチ、ポッド、ジャックをどうやって繋ぐとどんなキャラクターのギターになるかの具体例集。

これらの文献で勉強すれば、あとは工作技術が十分あれば望むピックアップに改造できる。

ちなみに、4芯のケーブルはギター屋や配線屋で買うと結構高額だけど、データ用USBケーブルをハードオフなり百均で買ってばらせば同等の品質のケーブルを格安でゲットできるのでオススメ。

ーーーー

10/03追加、手持ちのZO-3のピックアップをばらしてみた。


コイルAとBで、極性とコイルの白黒が逆になっている。通常のハムバッカーとして組む分には作業しやすいのかもしれないが、極性の判断はやりづらい。

2024年9月16日月曜日

6DJ8 Mini Watterのバイアス調整メモ

Tourer Part5に続き、ぺるけさんの6DJ8 Mini Watterを作った。

記事はこちら→http://www.op316.com/tubes/mw/mw-6dj8pp-2017.htm

本回路のバイアス調整のメモ。

こちらは6DJ8のGが16.2V、Kが19.2Vになるよう、初段の負荷抵抗と定電流回路を調整する必要がある。

手持ちの抵抗は6.2kΩと6.8kΩで、ZDは30Vのものを購入。

ZDは実測値30.5V、6.8kΩ、定電流回路の2SK30Aが3.9mAの組み合わせで通電すると、Gが18V、Kが21Vとなり、設計上のポイントから大きく外れてしまった。

これを回避するため、Idss=4.3~4.4mAとする必要がある。

手持ちの2SK30Aはすべて4.0mA未満で、逆に2SK170と2SK117は5.0mA以上で使えない。

残りのJFETを手当たり次第に探すと2SK184が1個だけあり、こちらがちょうと4.4mAだった。さらに、2SK30ATMで2.1~2.3mAのものがいくつかあり、2つ組み合わせると4.4mAになるペアを発見。

定電流回路をこちらに付け替えると、左右ともGが16V前後、Kが19.1前後となり、許容範囲に収まった。

FETの表面積が左右で大きく異なるので温度変化に弱くなるかもしれないが、ひとまずこの構成で動かすことに。

2024年8月27日火曜日

久々の真空管アンプ、真空管式スモーキーアンプを作る(3A5 + 3A4シングル)②

真空管スモーキーを段ボールブレッドボードで仮組したが、その回路図の話。
実物の写真や背景は以下①を参照してください。

黒字が定数値、赤字が実測値。
2枚のうち1枚目はリプルフィルタの抵抗が1kΩで、2枚目は220Ωに変えたもの。

カップリングコンデンサを104にしてライン入力で音楽を聞くとまあいい感じ。ウクレレのピエゾでは少し出力が物足りない。さらに電圧を上げるか、高能率のスピーカーに変えてみる?


2枚目のほうが高電圧のためか、少し大きな音が出る。
カソードのバイアス抵抗には、3A5だけでなく3A4のプレート電流も流れ込む。3A4の動作点を考えると-3.7Vのバイアスをかけたいので、180Ωから220Ωに差し替えたほうがよいかもしれない。

参考文献は以下。
Haruさんのコントロールアンプから、3A5の電圧増幅回路やグリッド抵抗の取り廻しを真似させていただく。

UX生さんが、3A5の低電圧での詳細な実測Ep-Ip図を公開してくださっており、動作点の検討に生かさせていただいた。

3A4はあまり作例がないので、昔のアプリケーションノートを参考に定数を決めた。

以上。

2024年8月26日月曜日

久々の真空管アンプ、真空管式スモーキーアンプを作る(3A5 + 3A4シングル)①

■電池管スモーキーの構想

ずいぶん昔、知人の愛煙家にアメスピの缶を大量にもらったので、スモーキーアンプのメタル版を作った。
久々に物置から出てきたのでいじってみたが、それなりに遊べる感じの音だ。
回路は本家の完全なパクリだが、実装は昔の自分ながら結構いい仕事をしていた。

 ボリュームに基板を固定し、いい具合にコンパクトに収めている。
 
スモーキーと一緒に死蔵していた電池管たちも発見。そういえば、メタルスモーキーの次は真空管スモーキーを作ろうと考えていたことを思い出した。

スモーキーアンプの回路図を探す中で以下の川端様のページを見つけ、自分でも作りたいと思って秋葉原で部品を集めたのだった。

当時は技術も知識も今以上に乏しく、ノイズ発生器しかできずに諦めてしまった。
今回は、当時の反省を生かしつつ電池管を生かし、ちゃんと音が出るものを目指して作ってみる。

■ブレッドボードで仮組
できたものがこちら。仮組だが、それなりのものにはなった。
ライン入力では一昔前のPCで鳴らしたくらいの音にはなる。
ウクレレのピエゾやギターを繋ぐといい感じだが、欲を言うともう少しゲインが欲しい。カップリングコンデンサが104のままだと低音が煩いので、472に変えるとちょうどよかった。

回路は以下の通り。
  1. A電源
    1. 構成
      1. アルカリ電池1.5V
  2. B電源
    1. 構成
      1. AC100V直結、ブリッジ整流、2段リプルフィルタ
    2. 供給電圧
      1. DC120V
    3. 主要素子
      1. 秋月の100uF/400V
      2. 抵抗は1kΩ、これで十分にリプル除去できていた。
  3. 増幅回路
    1. 構成
      1. 3A5電圧増幅2段、3A4電力増幅1段 ※無帰還
    2. 主要素子
      1. OPTはTOEIの一番安いもので、7kΩ:8Ωのタップを使用
      2. スピーカは秋月の安い樹脂コーンのもの。
      3. 3A5のプレート抵抗は両方とも33kΩ
      4. カソード抵抗は全体共通で180Ω+220uF。
      5. グリッドはすべて1MΩで設置
      6. カップリングコンデンサはフィルムの104 or 472。
      7. 各プレートには申し訳程度で1uF/250Vのセラコンも追加。
一応オリジナルの回路だが、ほぼ先人の回路を切り貼りしただけ。
回路図や参考資料などはまた後日記載予定。

できれば、電源のDC-DCコンバータ化、高電圧化、負帰還の追加あたりもやってみて、うまくいったものをちゃんと実装したいところ。